不動産のコト
2016.07.25
こんにちは
司法書士の内田です。
今回はご相談者からよく受ける
「引越ししたときに住所の変更登記は必要ですか?」という質問にお答えします。
結論から申し上げると、
引越しした際の住所の変更登記について法律上の義務はありません。
しかし、売却する際、不動産を担保に借り入れをする際などには、
不動産を購入した時点の住所、つまり登記簿に記載されている住所と
現在の住民票上の住所と一致している必要があります。
引越しをしていて、一致していない場合には事前に住所移転の登記が必要です。
登記を申請する際、住所の変更を証明する書類として「住民票」を添付します。
この住民票に「前住所、つまり登記簿上の住所」と「現在の住所」
「住所移転日」に記載されている必要があります。
登記簿上に記載されている所有者と、住所の変更登記をしようとしている方が
同一人物であることを証明するためです。
■住民票で沿革がつかない場合は?
では、複数回にわたり引越しをしているなど、
登記簿上に記載されている住所が住民票に記載されていない場合はどうするのでしょうか。
そのような場合には、本籍地の市区町村にて発行される「戸籍の附票」という住所移転の
履歴が載っている書類を添付して、移転の経緯を証明します。
ただし、本籍地を変更したり、戸籍の様式変更などにより改製された場合、
古くなった戸籍の附表は保存期間の5年間を過ぎると破棄されてしまいます。
■戸籍の附表でも沿革がつかない場合は?
戸籍の附表でも住所移転の沿革が証明できない場合は「上申書」という書類を添付します。
この書面には登記簿上の住所と現在の住所で沿革がつかないものの、
本人で間違いないという内容を記載し、実印を押印の上、印鑑証明書を添付します。
法務局によっては、権利証の添付も求められることがありますので、
事前に法務局や司法書士などの専門家に確認することをオススメいたします。
不動産の住所の移転登記をするのは売買のときが大半かと思いますので、
買主側と売主側における「住民票」の役割についても解説いたします。
まず買主は必ずといっていいほど「住民票」が必要です。
というのも買主というのはまだ登記簿に登場していないからです。
これから登記簿に記載される買主がどこに住んでいて、
どういう名前なのかということを法務局は把握したいのです。
そして、登記が完了すると登記簿に晴れて
新たに買主となった方の住所・氏名が記載されます。
ちなみに、住民票を求める大きな理由としては、
実在しない人の登記を防ぐためというのが代表的に挙げられることが多いです。
逆に土地や建物を売却する売主は住民票のご用意は原則不要です。
売主はすでに登記簿に記載されているため、住所・氏名は一目瞭然なわけです。
以前購入した際に住民票を提供して登記がされているため
売却する際にはもういらないよという考え方です。
ここまでの話はあくまでも原則です。
例外的に、売主に住民票の提出が求められる場合もあります。
もうお分かりですよね。
前述のとおり、売主が登記簿上の住所から住所を移転している場合です。
住民票の住所を変えたからといって、連動して不動産の登記上の住所が
自動で変わるものではないからです。
法律上、住所変更の登記は義務付けられてはいませんが、
転居を繰り返し、長年放置したままであると、最終的な手続きが煩雑になります。
登記の世界では住所のつながりが非常に大切です。
たとえ氏名が同一であったとしても住所が異なっていれば、
別人であるとみなされてしまうのです。
住民票の住所を移したあとは、忘れないうちに不動産についても
住所変更の登記を申請しておくという心掛けが大事になります。
『あれっ、住所を移したけど、登記の住所は変えてないよ。』という方は
一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※本記事は、公開時点での法律、規則等に基づいております。
法改正等により、閲覧時における最新の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
ライタープロフィール
司法書士内田 一輝
明治大学法学部卒業後、司法書士試験に合格。現在は東京都港区の司法書士法人中央法務事務所にて勤務。向学心が旺盛で、研修にも積極的に参加し、法律、規則や先例など日々学んでいる。綿密に調査し堅実な仕事を行う。不動産登記、後見業務を得意とする。趣味はテニス。
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